【「小さなオケで巨匠たちの白熱の名演、そしておすすめの聴き方も♪」~ラフマニノフピアノ協奏曲第2番を巡る不思議な音の旅⑤】

しほりです♪

ラフマニノフの続き、最終回です。

①始まりはこちらから→→①へ

ラフマニノフの音の旅♪これまで、本人演奏、指揮ストコフスキーの録音のご紹介をしてきました。1929年のマイクを使った電気録音と、1924年の蓄音機に直接録音したアコースティックの録音です。

香山さんとのやりとりを通じて、二人の巨匠たちの思い入れのある演奏、こう聴いたらいいかも♡という私的ベストな聴き方にたどり着きました。

今回は、⑴⑵⑶と分けましたので、最後に進んで⑶の「おすすめの聴き方」にURLはったの見てくださっても♪ですし、

また、ここに至るまでの音や歴史の話がとても面白かったので、ご興味ある方は、⑴⑵のお話の方お付き合いくださるとうれしいです(^^)

ラフマニノフがオーマンディーとも第二番の協奏曲を録音していたのか⁉︎という顛末は?

そこにはとても考えさせられることがありました。

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1924年、白熱のアコースティック録音と、巨匠の拒絶

こんな小さなオケで、あのラフマニノフ協奏曲を演奏したらどうなるでしょう?

1stバイオリンが7、2ndバイオリン4、ビオラ3、チェロ2、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、バリトンホルン、ベースサクソフォン、コントラバスーン。

最後の方、珍しい楽器が出てきますが、場所を取る大きなコントラバスやティンパニは入れられないので、ベースサックス、コントラバスーンという管楽器が代わりをしているのです。

そして、2メートル近い身長のラフマニノフが、普通のグランドよりより小さなスタインウェイモデルBの前に…

蓄音機のホーンに録音するため、ミニマムとも言えるオケで録音に挑んだのです。

あのスケールの大きなピアノ協奏曲を録音するなんて、当時としてはすごいチャレンジでした。

曲自体は1901年に作られていますが、当時の人たちは、生演奏で聴くしかなかったのでした。きっと待望の録音だったに違いありませんね♪

ストコフスキーは、録音のために大胆な編曲をしました。

作曲者を前にしても、自分の主張を貫いたという指揮のストコフスキー。「音の魔術師」との異名をとるほどでした。

ラフマニノフともだいぶやりあったのでは!と想像はかたくないですが、

このミニマムオケでの巨匠二人の白熱の演奏が、蓄音機を前にした狭い空間で繰り広げられたかと思うと、

録音創生期の人たちの熱い情熱とパワーをこの演奏から感じてしまうのです。

この年初に行われた録音は、第2楽章、第3楽章のみ成功したそうです。

第1楽章は、作曲した時も後から出来上がって、初演も遅れたくらい。それだけラフマニノフの思い入れも強い楽章です。

思うように録音するのには、困難を極めたのでしょう。

第1楽章は、この年の暮れに再度チャレンジされました。しかし、ラフマニノフもストコフスキーも、この録音を世に出すことを拒絶…

やむなく第2楽章と第3楽章のみリリースされたのです。

また第1楽章の3枚の原盤のうち1枚が近年まで、無くなったことになっていたのですが、発見され完全版として、雑音を取り除くデジタルリマスター版でリリースされたのが、前回ご紹介した録音です。

⑵今時の録音と落とし穴⁉︎

さて、私と香山さんのやりとりでは、他のラフマニノフ自演も見つかりました。

音作りのことを考えさせられたり、はたまたフェイクの落とし穴にはまりそうになったり。まさかの意外な展開に。(自演でない音源は載せてません~)

音、興味のある方は、聴き比べてみても♪

そして、相変わらず寝落ちしてたね、私…

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(香山さんより)

今回いろいろ探してみつけた、同じ1924年の音源からの再生。これはかなり音色まで作り込んだ感じですね、ピアノだけ妙にスタインウェイっぽくなってますが、オケはちょっと不自然かな。

ラフマニノフやストコフスキーはどう感じるでしょうね。

エジソンの昔から最新のハイレゾまで、録音というのは原音そのものではなく、再生装置で聴くために音を「つくる」こと無しでは成り立ちません。

音楽で伝えたいことは何なのか、そのための正解は無いと思います。

(私の返信)

昨晩は遅く帰って、ラフマニノフ聴きながら寝落ちしてしまってました。

聴きくらべると、音作りというものの奥深さを感じますよね。

教えていただけて、本当に感謝しております。

最後の最新版は、電気っぽい感じで、今時の感覚の方が作った気がしますね。一応、他の楽章も探して聴きました。

私は、1924のノイズ取り除かれた版が好きです。

音の世界に入り浸ってしまう感覚でした。

1929版は、最初に紹介したのしかないかと思ったら、ほかにもあったので、聴きくらべたら、なんか音の間が隙間だらけに思えて、こんなかな?と思っていたら、コメ欄に他の人のだと書いている方がいました。ご参考までに。

(香山さんの返信)

これ、A氏(*注)が紹介していた音源と同じですね。

(*注:前の記事に出てくる私が思い切って質問してみた人(^^;)1929年春オーマンディー指揮のラフマニノフ自演で録音。いっさい電気加工してないと書いてあった~)

それで、コメント欄の指摘している音源を探してみたら、

Jorge Luis Prats Mexican Philharmonic Orchestra, Enrique Bátiz

ありました。現代のデジタル録音です。

amazonmusicにあったので、間違いない音源でしょう。

この音源をもとに、フィルターをつかって周波数帯域を狭め、強弱を圧縮して歪を加えるなど古色加工された、デジタルフェイクですね。

音の立ち上がりの鋭さや、オケ音がフォルティッシモのときかぶったピアノの音など、1929年の録音ではありえない、ヘッドフォンで聴けば違和感が目立ちます。

そもそも演奏スタイルがラテン的フレージングが目立ち、それはそれで面白いですが・・・

オーマンディーは職人的な指揮者で、ソリストのスタイルに合わせて演出できるので、こういう演奏もありかなと思いましたし、オーマンディ/フィラデルフィアのサウンドの特徴である、ボコボコした低弦の雰囲気は良く似ています。なかなかうまい演出ではあります。

誰がやったことなのかわかりませんが、デジタル処理を激しく糾弾しつつ、聴く耳を持たないyoutube視聴者をからかってやったのかもしれません。

youtubeに限りませんが、デジタル時代の音楽はいろんなフェイクが混ざり込んでいます。

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~またもや、香山さんに無茶振りしてしまった私でしたが、思わぬ繋がりで、フェイクが判明してびっくりでした!まるで導かれているかのようでした。

演奏がメッチャノリ良くて砂漠の中疾走してるみたいでしたが、ラテン系の方の演奏の加工だったのですね~

比べて聴くと、本物の方はものすごくぐっと胸に来るのいうのか、内に迫ってくる感じだったのに、なんか開けっ広げなので、あえてそういう風に若いオーマンディーがしたのか?なんて思っちゃってました(・・;)

いやはや、シェアするって難しいって思いました。香山さんに相談した甲斐がありました!~

⑶私のおすすめバージョン♪

さて、話を戻しますと、

私が最初に聴いたラフマニノフ自演の動画は、1929年の電気録音。

マイクで音が拾えるようになったので、フルオーケストラです。

5年前にリリースできなかった第1楽章。

ラフマニノフもストコフスキーも、そして、レコード会社、ファンが待ち望んだ録音でしょう♪

欠けていた第一楽章への意気込みが、ひしひしと感じられます。

なので、初めて聴いた時は、本当にびっくりするほど、胸に響きましたし、そして何度聴いても良いのです。

それに対して、2~3楽章は、音の加工もある上、なんか、え?っていうほど、第1楽章の気合いみたいなものが無くて、

動画投稿者が「本人の演奏かは議論がある」と、追記してしまったほど、

ラフマニノフらしさのあまり感じられない自演になっているのは、

1924年の演奏が前にあったからだったと思います。

ご紹介した、デジタルリマスター版の1924年アコースティック録音。

当時は巨匠たちがリリースを許さなかった第1楽章も入っていますが、

この録音の第2楽章の美しさ、そして、第3楽章の巨匠たちの白熱の掛け合いを聴くと、

この差がはっきり感じられたのです(^^)

第1楽章の差も聴き比べると面白いですね♪

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(私のメール)

やっぱり、1楽章は1929版、あとは、1924の方が好きです。

特に3楽章の巨匠同士の駆け引きというか、

そうきたか!なら、どうだ~

くらいの緩急自在なせめぎ合いには、ワクワクしました(^^)

あくまで私感ですけどね(^_−)−☆

(香山さんより)

>1楽章は1929版、あとは、1924の方が好きです。

たぶん、演奏者の考えと同じですね。

レコード会社は演奏者の没後に秘蔵音源として出したわけです。商売ですからね。それにファンもマニアも喜びます。

ラフマニノフは自分の音源管理にも厳しく、多くの録音が生前には発表されなかったそうで、勝手に出したエジソンの会社とは絶縁したという記事をどこかで読みました。

あくまで音楽を楽しむ側としては「信じるのは自分の感性」ということで良いのではないかと思います。

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ということで、おすすめは、

電気録音の1929年版で第1楽章。

→こちら

アコースティック録音の1924年盤で、第2第3楽章。09:31から第2楽章、19:47から第3楽章。あのミニマムオケで挑戦した音、聴いてみてくださいね~

→こちら

私の感性からですが、なんか元気になるし♪ぜひ一度試して楽しんでいただけたら~*\(^o^)/*

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さて、みなさん、こんな不思議な音の旅、ご一緒に長々と読んでいただき、本当にありがとうございました♡

90年以上前の古い録音でも、演奏者の思い、伝わってくるものが素晴らしかったです♪

そして、ご協力いただいた香山さん、時空を超えたような音の旅ができて私も楽しかったです。心より感謝いたします(^^)

最後にWikiから見つけたラフマニノフの言葉を♪

「私はただ、自分の中で聴こえている音楽をできるだけ自然に紙の上に書きつけるだけです。

…私が自らの創作において心がけているのは、作曲している時に自分の心の中にあるものを簡潔に、そして直截に語るということなのです。」

お二人の写真はWikiよりお借りしました。

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