「型彫り絵」
「これは単なる型彫りではなく、何十枚もの型紙を使って染めた絵なのだが、なんと呼んだら良いのだろうね?」と、職人の高井さんから相談を受けました。
伊勢型紙の型彫り職人として、すごい腕の持ち主だったお父様が、仕事の終わった後の時間に、創作してらしたお父様ならではの絵だったからです。
2年前に高井さんが、型彫りの技術を途絶えさせないため、職人の道に戻られた時、5枚だけ手元に戻ったという貴重な作品。
一つの作品に30〜50枚もの型紙を使い、染めたそうなのです。
その型紙はすでに無く、残るのもこの絵だけなのです。
写真は、その中で高井さんが特に
「好きだ」
と仰る「親子の鹿」
鹿の親子の毛並みの差まで、細かく再現されていて、型で彫ったとは思えないけれど、
彫ってあるので、筆で描いたものとも一味違う技術の極みでもあり、アーティスティックでもあり、
今回特別展示に来てくださった方々も、釘付けで見てくださっている方が多いのです。
この作品は、技術の高さだけでなく、
とても温かみや優しさが伝ってくるので、さらに人を惹きつけるのだと思えました。
この作品を初めて見た時、私はあることを思い出しました。
友人の内藤さんのご主人と娘さんの親子が創作する金属の芸術。
以前『陸のものとも・水のものとも』という親子展の記事を書いたので、もしかしたら憶えていてくださる方もいるかもですが、
ご主人の作品から、ご一家とそれを守る父としてのご主人の、愛や強さを感じて、思わずほっこりしてしまったのです。鉄の作品なのに(*´꒳`*)
ふと、この作品からも、お父様の愛が伝わってくるようで、高井さんに
「ご兄弟は何人?」とお聞きしたら、
「三人」とのことでした。
「やっぱり〜!」
職人のお父様、口では言わなくても、
ご家族への愛が深く作品に注がれていたのではないでしょうか。
高井さんが「一番好き」というのも、
亡くなったお父様の気持ちが伝わっているようで、
この作品を通して、お父様が見守っていてくださるように感じました。
お父様は数ある作品を、みんな気前よくあげてしまわれたそうです。
でも、たった5枚だけ戻ってきた中に、この作品があったことも、なにかの計らいだったのかもしれませんね♡
27日日曜日には、この貴重なお父様の作品5点と、コロナで自粛の春に生まれた型彫り『祈り』『鎮魂』『新生』の三部作を展示します。
高井さんのお話と実演もありますので、
ぜひみなさんにも、作品を直接観ていただき、お話を聴いていだだけたらと思います。
多目的室にて、各回5人までの入場となりますので、お手数ですが、ご予約の方お願いいたします。
詳しくは、→こちらにて
江戸型彫りのこと、会場アクセスなどは→こちらの記事で。
どうぞよろしくお願いいたします(^^)